同性間の婚姻制度をめぐる一連の地裁判決を受けて(会長談話)
同性間の婚姻制度をめぐる一連の地裁判決を受けて
(会長談話)
令和5年7月14日
東 京 司 法 書 士 会
会 長 千 野 隆 二
同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定が憲法に違反するとして争われ、全国5つの地方裁判所に係属していた事件の判決が、令和3年3月から令和5年6月までの間に言い渡されました。
そのうち4つの地裁判決では、これらの諸規定を、札幌地裁は憲法第14条第1項違反、名古屋地裁は憲法第24条第2項及び第14条第1項違反、東京地裁及び福岡地裁はいずれも憲法第24条第2項に違反する状態と、それぞれ判示されました。また、これらの諸規定を合憲と判断した大阪地裁においても、「同性間の婚姻等の制度の導入について何ら法的措置がとられていないことの立法不作為が、将来的に憲法第24条第2項に違反するものとして違憲になる可能性はある」旨が判示されました。
当会は、これまでもシンポジウム「むきあう・ささえる・つながる~セクシャルマイノリティの直面する困難から個人の尊厳を考える~」の主催(平成28年1月11日開催)や渋谷区が実施する「にじいろパートナーシップ相談」への相談員派遣のほか、「当会弔慰及び見舞金等規程」第3条において、その支給対象とする「配偶者」に事実上の婚姻関係にあることを官公署が承認して発行する証明書を有する同性パートナーも含める旨の規定を整備するなど、セクシャルマイノリティの方々が直面する困難に向き合い、国民の権利を擁護する司法書士としてどのような役割を果たせるかを模索し、実践してきました。このほか、日本司法書士会連合会が平成30年から取り組む東京レインボープライドにおける相談会に当会会員も参加し、セクシャルマイノリティや同性婚等の問題に取り組んできました。
平成27年以降、多様な性に対する理解のもと、誰もが自分らしく生き生きと活躍できる社会の実現等を標榜し、渋谷区及び世田谷区を皮切りに都内多数の区や市がパートナーシップ制度を導入し、東京都も、当事者の一方が都内在住、在勤又は在学であれば利用できるパートナーシップ宣誓制度を導入するに至っています。
当会は、このように婚姻についての社会通念や価値観が変遷しつつあると言える中で提起された同性間の婚姻制度を巡る一連の訴訟における判決を契機の一つとして、全ての国民がその性的指向又は性自認にかかわらず、異性間の婚姻関係と異ならない法的効果を享受可能な制度について、さらに国民的議論が広がるとともに、自由かつ公正な、より良い社会が形成されることを期待いたします。