お知らせ

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令和6年3月に生じた登記・供託オンライン申請システムの障害に関し、法務省に対し、国民の信頼に足るシステムの改善及び適正運用等を強く求める会長声明

令和6年3月に生じた登記・供託オンライン申請システムの障害に関し、法務省に対し、
国民の信頼に足るシステムの改善及び適正運用等を強く求める会長声明

 

令和6年4月5日

東 京 司 法 書 士 会

会 長  千 野 隆 二

 

 令和6年3月25日(月)及び同月29日(金)、法務省の登記・供託オンライン申請システム(以下「本システム」という。)に障害が生じ、長時間にわたり、インターネットによる登記申請(以下「オンライン登記申請」という。)ができない状態となった。とりわけ3月29日の障害の程度は非常に重く、午前、午後ともに障害が生じ、午後の障害では、午後2時30分頃から午後7時30分頃までオンライン登記申請ができない状態であった。

 法務省は、3月29日当日の障害への対策として、通常は法務局の窓口開庁時間、オンライン登記申請の受付時間のいずれも午後5時15分までとしているところ、同日の法務局の窓口開庁時間を午後8時まで、障害から復旧後のオンライン登記申請の受付時間を午後9時までとする措置を採った。

 午後9時までにオンライン登記申請をしたにもかかわらず、同日付けの受付とならず、令和6年4月1日付けの受付扱いになった事案も多く、その後法務省は、これらについて「3月29日付けの受付にするシステム上の対応を実施します。」、「システムにおいて個々の申請ごとに対応する必要があるため、一定のお時間をいただくことになります。今後1週間程度を目処に行いますが、具体的な実施日等については改めてご連絡いたします。」と公表し、現在においても障害の影響は続いている。

 

 3月29日の障害の発生原因について、法務省は、現在ホームページにおいて、「現時点においては、同日に大量のオンライン登記申請があったことに加え、全国の登記所において、これを処理するためのシステム操作を短時間で集中的に実施したことにより、システムが高負荷な状況となったことが原因であると考えています。」とし、「これを受けて、同様の状況になるおそれを感知した場合には、全国の登記所でシステム操作を分散して実施する措置を講じます。」との表示がされている。

 

 しかし、毎年度の最終週にオンライン登記申請が集中することは、過去の実績からも当然に予想されたはずであり、オンライン登記申請の集中は想定内の事態にすぎないはずである。それにもかかわらず、「同日に大量のオンライン登記申請があったこと」を前提とする障害により、長時間にわたりオンライン登記申請ができない事態に陥ったことについて、当会は、不動産取引、融資取引等に関係し、オンライン登記申請を予定していた全ての国民に極めて重大な影響を及ぼした事故であったと評価するとともに、本システムが、障害の原因とされたオンライン登記申請の集中に対応できない脆弱なシステムであったことは極めて遺憾と言わざるを得ない。

 

 なお、本システムにおいて、オンライン登記申請等をすることができない障害が発生した場合であって、速やかにその復旧をすることが困難であると見込まれるときは、本システムの業務代行システムによる運用の仕組みが用意されているが、当該業務代行システムは稼働されなかった。そして、その理由は明らかにされていない。

 

 一連の障害の中、全国の司法書士の中には、予定していたオンライン登記申請から書面による登記申請に切り替え、全国各地の法務局窓口に走った者が多くいた。また、時間的、距離的に法務局窓口に行くことはできないため、本システムの復旧を待ってオンライン登記申請をした司法書士も多かった。すなわち、当日の登記申請を無事に終え、混乱を最小限に食い止め、国民の権利を擁護したのは全国の司法書士である。

 

 当会及び当会会員のみならず、日本司法書士会連合会、全国の司法書士会及び全国の司法書士は、本システムが稼働を開始した平成16年以来、本システムを積極的に利用することで、登記処理の効率化を向上させ、もって国民の権利擁護に資する対応をしてきた。本システムは、社会や経済のインフラ的な役割として機能しているところ、今回の障害により本システムへの信頼が損なわれたとすれば、今後のオンライン登記申請の活用が大きく減速しかねないのではないかとの懸念を抱かざるを得ない。

 

 オンライン登記申請自体には様々な利点があることから、当会は、今後もオンライン登記申請の利用の促進に助力していきたいと考えている。

 そのためにも、法務省は、一連の障害の発生原因の徹底究明及び詳細な説明を行うべきであり、当会は、法務省に対し、国民の信頼に足るシステムの改善と適正運用の早期実現及びこれに向けての具体的な対策の公表を強く求めるものである。


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