生活保護基準引下げを違法とした最高裁判決を評価し、国に対し、全ての生活保護利用者に対する補償及び生活保護基準の引下げが連動する諸制度に与えた影響の調査など必要な措置を求める会長声明
生活保護基準引下げを違法とした最高裁判決を評価し、
国に対し、全ての生活保護利用者に対する補償及び
生活保護基準の引下げが連動する諸制度に与えた影響の調査など
必要な措置を求める会長声明
令和7年7月31日
東京司法書士会
会長 千 野 隆 二
令和7年6月27日、最高裁判所第三小法廷は、平成25年から同27年にかけて実施された生活保護の生活扶助基準を最大10%引き下げる内容の改定(以下「本件改定」という。)に基づき行われた、生活扶助の支給額を引き下げる旨の保護変更決定の取消し等を求めた訴訟において、本件改定が違法であるとの画期的な判決を言い渡した。
判決では、生活保護法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないとする同法第3条、保護基準は、生活保護を必要とする状態にある者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならないとする同法第8条第2項を踏まえ、厚生労働大臣が生活扶助基準を改定するに当たり「専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有している」とされた。
その上で、本件改定のうち、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正するために物価変動率のみを直接の指標として基準生活費を変更したデフレ調整について、物価変動率のみを直接の指標として基準生活費の改定率を定めることが、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を有するものというためには、物価変動率のみを直接の指標とすることが合理的であることにつき、物価と最低限度の消費水準との関係や、従来の水準均衡方式による改定との連続性、整合性の観点を含め、専門的知見に基づいた十分な説明がされる必要があるところ、本件改定に際しては、基準部会等による審議検討が経られていないなど、その合理性を基礎付けるに足りる専門的知見があるとは認められず、この点において、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続には過誤、欠落があったとし、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法第3条、第8条第2項に違反して違法と判断された。
生活保護基準は、憲法第25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための基準である。また、最低賃金、住民税の非課税基準、社会保険料及び就学援助などの様々な施策とも連動しており、その引下げは、生活保護制度を利用していない国民に及ぼす影響も計り知れないものがある。
今回の最高裁判決において、生活扶助基準改定にあたっての厚生労働大臣の裁量は、「専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権」であり、その裁量権の範囲を逸脱した引下げは許されないことを5人の裁判官全員の一致により判断したことは、司法の役割を十分に果たしたものと高く評価できる。
当会は、この最高裁判所の判決を受け、国に対し、判決の趣旨に則り、全ての生活保護利用者に対し、本件改定前との差額分の保護費相当額を補償するとともに、本件改定が生活扶助基準と連動する諸制度に与えた影響を調査するなど必要な措置を講ずることを求めるものである。
当会は、これまでも「生活保護基準の引下げに反対する会長声明」、「職権により生活保護を適用する際の運用の見直しに関する会長声明」を発出してきたほか、生活困窮者らの路上相談への相談員派遣など、憲法が保障する生存権を具体化するための取組を行ってきた。今後も、国民の権利を擁護し、自由かつ公正な社会を形成するとの観点から、これらの取組を継続してまいる所存である。

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