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パブリックコメント「法務局における遺言書の保管等に関する省令の一部を改正する省令案」に対する意見

パブリックコメント

「法務局における遺言書の保管等に関する省令の一部を改正する省令案」に対する意見

 

令和7年10月31日

東京司法書士会

 

 当会は、標記改正案に関して以下のとおり意見を述べる。

 

1.本改正案の方向性について

【意見の趣旨】

 本改正案の方向性について賛成する。

 

【意見の理由】

 法務省民事局が公表している「遺言書保管制度の利用状況」によれば、法務局における遺言書の保管申請件数は、令和5年の1万9,336件(月平均1,6 11件)から、相続登記の申請義務化が開始した令和6年は2万3419件(月平均1,951件)に増加しており、令和7年も9月時点ですでに1万7,41 7件(月平均1,935件)と昨年とほぼ横ばいに推移している。これは遺言書保管制度の発足以降、国民の認知度も向上していることの表われであると思われる。

 本改正案によって、遺言書保管制度による相続をめぐる紛争の未然防止、遺言書作成の利便性の向上に加え、相続人等にDV被害者等が存在する場合の遺言書保管制度利用の懸念を解消することが期待できる。

 よって、本改正案の方向性について賛成する。

 

2.DV被害者等の住所等の非表示措置の新設について(改正後第30条の2第 1項関係)

【意見の趣旨】

 DV被害者等の住所等の非表示措置を新設することに賛成する。

 

【意見の理由】

 令和6年4月に施行された不動産登記法の改正により、登記事項証明書等における代替措置(第119条第6項)が新たに導入された。これによって不動産登記記録に記載されている自然人の住所が公開されることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省で定める場合において、その者からの申出があったときは、登記事項証明書等に当該住所に代えて「公示用住所」を記載できることとなり、DV被害者等の個人の生命や身体の保護を一層図ることができるようになった。

 そして、法務局で保管している遺言書の閲覧又は開示の場面においても、DV被害等の事情により個人の生命や身体に危害が及ぼすおそれがあることが想定されることから、DV被害者等について非開示措置を設ける必要性がある。

 他方で、公開が原則である不動産登記記録とは異なり、遺言者以外の者で遺言書の閲覧や遺言書情報証明書を取得することができる者は、遺言者が死亡している場合における相続人、受遺者など一定の関係がある関係相続人等に限られていることから(法務局における遺言書の保管等に関する法律第9条)、公開を前提とする公示用住所を記載するといった代替措置まで設ける必要性はなく、 DV被害者等の住所又は本籍を非開示にするという措置を設けることで足りるものと考える。

 よって、DV被害者等の住所等の非表示措置を新設することに賛成する。

 

3.非表示措置の申出人の要件について(改正後第30条の2第1項関係)

【意見の趣旨】

 DV被害者等の住所等の非表示措置の申出ができる者の要件について、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に規定する被害者のみならず、ストーカーや児童虐待等の被害者も申出ができることを省令に明文で定めるなど明確にすることを求める。

 

【意見の理由】

 改正後第30条の2第1項では、申出ができる者の要件として、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下「配偶者暴力防止法」という。)第1条第2項に規定する被害者であって更なる暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがある」、「その他これに準じる者が被害を受けるおそれがある」をそれぞれ挙げている。

 本改正案では、配偶者暴力防止法の被害者は明文で規定されているが、ストーカーや児童虐待等の被害者についても、配偶者暴力防止法の被害者と同様に保護の必要性が高いものと考える。本改正案の「その他これに準じる者」に、これらの被害者も含まれると解釈することで、ストーカーや児童虐待等の被害者も非表示措置の申出ができると考えられるが、一方で「その他これに準じる者」の範囲が不明確であるため、申出を躊躇したり、遺言書保管官の恣意的な判断がなされたりする可能性も否定できない。

 そこで、不動産登記における登記事項証明書等における代替措置の要件(不動産登記規則第202条の3)と同様に、ストーカーや児童虐待等の被害者も、申出ができることを省令に明文で定めるなど明確にすることを求める。

 

4.非表示措置申出書添付書類について(改正後第30条の2第4項第1号関係)

【意見の趣旨】

 DV被害者等の住所等の非表示措置申出書添付書類のうち、「被害を受けるおそれがあることを証明する書類」について、被害事実を裏付ける公的書面が添付されている場合には、申出人の陳述書の添付を不要とするなど申出人の負担を考慮した運用を求める。

 

【意見の理由】

 改正後第30条の2第4項第1号では、非表示措置の申出にあたり、「被記録情報が明らかにされることにより被害を受けるおそれがあることを証明する書類」の提供が必要とされているところ、その書面の具体的内容については定められていない。

 これに関連して、不動産登記法の登記事項証明書等における代替措置(第11 9条第6項)の申出の際に添付する「措置要件に該当する事実を明らかにする書面」は、過去の被害の事実を裏付ける公的書面のほかに、措置要件に該当する事実を明らかにする書面として、具体的な被害の事実の内容と更に被害を受けるおそれの内容とおそれが生じる理由の詳細等を記載した申出人の陳述書の提供が必要とされている(令和6年4月1日付け法務省民二第555号通達)。

 このことは、公開が原則である不動産登記記録において、住所とは別の「公示用住所」を記載するのであるから、代替措置申出の濫用や措置の要否を登記官が判断するうえで、DV支援措置決定通知書など被害の事実を裏付ける公的書面のほかに、申出人の陳述書の提供を求めることは一定程度理解できる。他方で、 DV被害者等が、被害の態様を詳細に陳述することは、被害をフラッシュバックするなど、被害者にとって精神的に相当な負担を課す場合があることに留意すべきである。

 法務局における遺言書保管制度においては、遺言の閲覧者等の範囲が限定的であることを考慮すれば、遺言書保管官が、DV被害者等にとって精神的に相当な負担を課してまで非開示措置の要否を厳格に判断する必要性は低いと考えられるのであり、DV支援措置決定通知書など被害事実を裏付ける公的書面が添付されている場合には、これをもって「被害を受けるおそれがある」と判断することは十分可能であると考える。

 したがって、「被害をうけるおそれがあることを証明する書類」については、 DV支援措置決定通知書など被害事実を裏付ける公的書面が添付されている場合には、申出人の陳述書の添付を不要とするなど、申出人の負担を考慮した運用を求める。

 

5.証明・閲覧に関する請求書の記載事項・添付書類の省略の拡充等(改正後の第30条の2第5項、第33条第3項第1号、第44条第2項及び第49条第3項関係)

【意見の趣旨】

 改正後の第30条の2第5項、第33条第3項第1号、第44条第2項及び第 49条第3項に規定する「その他これに準ずる場合」の具体的な例示を通達等で示すことを求める。

 

【意見の理由】

 改正後の第30条の2第5項、第33条第3項第1号、第44条第2項及び第 49条第3項では、遺言書保管事実証明書の写しを添付した場合のほかに「その他これに準ずる場合」を規定する。

 しかし、「その他これに準ずる場合」とは、具体的にどのような場合であるかが判然としない。

 そこで、通達等で「その他これに準ずる場合」について、具体的にどのような場合であるかの例を示すことを求める。

 

6.証明・閲覧に関する請求書の記載事項・添付書類の省略の拡充等(改正後第 34条第1項第1号ロ関係)

【意見の趣旨】

 改正後第34条第1項第1号ロに規定する「その他のイに準ずる書類」の具体的な例示を通達等で示すことを求める。

 

【意見の理由】

 改正後第34条第1項第1号ロでは、相続人を証明する書類として遺言者の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本等のほかに「その他のイに準ずる書類」を規定する。

 改正前第34条第1項第1号では、「準ずるもの」として、「遺言者又は相続人が外国人である場合」に限定されていたところ、本改正案では外国人である場合との限定が排除されたものと考えられる。

 しかし、「その他のイに準ずる書類」とは、具体的な場合や具体的な書類が判然としない。

 そこで、通達等で「その他のイに準ずる書類」について具体的な例を示すことを求める。

 

7.証明・閲覧に関する請求書の記載事項・添付書類の省略の拡充等(改正後第 34条第1項第1号イ同条同項第2号関係)

【意見の趣旨】

 改正後第34条第1項第1号イに定める「法定相続情報一覧図の写し」について、法定相続情報番号を提供したときは、当該番号の提供をもって添付を省略することができる規定を設けることを求める。

 また、同条同項第2号及び第44条第1項について、「法定相続情報一覧図の写し」の添付が想定される場合においても、同様の規定を設けることを求める。

 

【意見の理由】

 本改正案の目的は、「請求人の負担軽減、手続全体の整合性の確保等の観点から、関係相続人等による証明・閲覧の請求について、請求書に記載すべき事項及び添付すべき書類を省略することができる範囲を拡充する改正を行う」(意見募集時の『法務局における遺言書の保管等に関する省令の一部を改正する省令案の概要』)とされており、本改正案の目的の一つが請求人の負担軽減であることがうかがえる。

 不動産登記規則第37条の3第1項には、法定相続情報番号を提供したときは、当該番号の提供をもって、相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる旨が規定されている。

 また、同条第2項では、相続人の住所が記載された法定相続情報番号を提供したときは、当該番号の提供をもって、登記名義人となる者の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる旨が規定されている。これらはいずれも、登記申請人の負担軽減及び相続登記の促進に資する制度となっている。

 そして、この制度を法務局における遺言書の保管制度にも拡大することは、請求人のさらなる負担軽減が図られることにより、法務局における遺言書の保管制度の利用が促進され、ひいては本法律の立法趣旨の一つである「相続をめぐる紛争の防止」につながるものと考えられる。

 よって、改正後第34条第1項第1号イに定める「法定相続情報一覧図の写し」について、法定相続情報番号を提供したときは、当該番号の提供をもって添付を 省略することができる規定を設けることを求める。

 また、同条同項第2号に定める「相続人の住所を証明する書類」についても、法定相続情報番号の提供をもって添付を省略することができる規定を設けることを求める。

 この他に法定相続情報一覧図の写しの添付が想定される第44条第1項についても同様の規定を設けることを求める。

 

8.遺言者による遺言書の閲覧の方法(改正後の第22条第2項及び第35条第 2項関係)

【意見の趣旨】

 第22条第2項及び第35条第2項を新設することに賛成する。

 

【意見の理由】

 令和2年2月10日に「法務局における遺言書の保管等に関する省令案(仮称)」(案件番号 300080208)が公示され、令和2年4月20日に同省令案に対する意見募集の結果が公示された。

 その結果によると、「複数の遺言書が保管されている場合には、1通の遺言書情報証明書に全ての遺言書の画像情報等が記載される」旨が示されており、実務上もこれに従った運用がなされているようである。確かに複数の遺言がある場合に、その一部の遺言しか表示又は記載されないと、一部の相続人や受遺者による恣意的な相続手続が行われる可能性も考えられることから、遺言者の意思を反映した適切な相続手続が行うべきであるという観点においても、当該運用は是認できる。

 そして、本改正によって第22条2項を新設して明文化することにより、閲覧における実務上の運用が全国的に統一された明確な手続となることが期待できる。

 また、本改正によって第35条第2項を新設して明文化することにより、遺言書保管官が記載すべき事項の実務上の運用が全国的に統一された明確な手続となることが期待できる。

 よって、第22条第2項及び第35条第2項を新設することに賛成する。

以上


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