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パブリックコメント「不動産登記規則の一部を改正する省令案」に対する意見

パブリックコメント
「不動産登記規則の一部を改正する省令案」に対する意見
(案件番号 300080342)

 

令和8年2月3日

東京司法書士会

 

当会は、標記省令案に関して、以下のとおり意見を述べる。

 

1.はじめに

 本改正の「国籍を登記所において把握することは、国土の適切な利用及び管理の観点から、外国人による不動産保有の実態を把握するために必要である」との目的は、一定程度理解できるところである。

 しかし、国籍は不動産登記法に定められている登記事項ではない。また、本改正では、国籍を検索用情報として申出させるところ、検索用情報は、不動産登記法第76条の6の規定に基づき、職権による氏名等の変更登記を行うために、登記官が住基ネット情報を検索するため及び所有権登記名義人に連絡するための情報であって、国籍は、検索用情報とは全く無関係な情報である。

 したがって、国籍を検索用情報として申出するとの制度設計は疑問無しとしない。冒頭にこのことを表明した上で、国籍を検索用情報とする改正をするのであれば、その運用等について、以下のとおり本改正案について意見を述べる。

 

2.国籍を証する情報について(改正案第158条の39第2項関係)

【意見の趣旨】

 国籍を証する「市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」について、検索用情報の申出を行う者の手続的負担に配慮して、(1)戸籍電子証明書提供用識別符号、(2)旅券等の写し、(3)戸籍の証明書の写しも加えるべきである。

 また、(1)に関連して、法定相続情報一覧図を提供した際には、改正案第158条の39第2項ただし書の「申出に係る国籍が当該所有権の登記名義人となる国籍であることを登記官が確認することができる事項を申請情報の内容としたとき」に該当するものと解すべきであり、さらに、(3)戸籍の証明書の写しについては、本籍の表示のうち都道府県以外の部分のマスキングも許容するべきである。

 

【意見の理由】

 本改正案では、検索用情報の申出をする場合には、「国籍を証する市区町村その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」(改正案第158条の39第2項本文)を提供しなければならないとされている。

 相続登記の促進及びデジタル化の推進のための諸施策により、不動産の登記申請時に必要とされている添付情報の提供は、添付省略や簡素化が図られているところである。例えば、相続登記においては、相続人の住所が記載された法定相続情報一覧図の写し又は法定相続情報番号を提供したときは、登記名義人となる者の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる(不動産登記規則第37条の3第2項)。また、電子申請の申請人が個人番号カード用署名用電子証明書を提供したときは、申請人の現在の住所を証する情報の提供に代えることができる(不動産登記規則第44条第1項)

 しかし、検索用情報の申出人の本籍の情報は、法定相続情報一覧図の記載事項ではなく、また個人番号カード用署名用電子証明書への格納情報ではないことから、別途、国籍を証する情報を準備しなければならないこととなる。そのため、本改正により、検索用情報の申出に際して、現在よりも手続負担の増加が生じることとなる。

 そこで、申出人の手続負担に配慮して、国籍を証する情報として、(1)戸籍電子証明書提供用識別符号、(2)旅券等の写し、(3)戸籍の証明書の写しも加えるべきである。

 なぜならば、検索用情報は、検索用情報管理ファイルに記録され、公示されない情報であるから、登記申請の添付情報と同等の厳格さを求める必要はなく、これらの情報であっても国籍を確認するには足りるものと考えられるからである。

 以下では、前述の(1)~(3)の情報でも許容される理由を述べる。

(1)戸籍電子証明書提供用識別符号

 令和7(2025)年3月24日以降、行政手続において、紙の戸籍証明書に代えて戸籍電子証明書提供用識別符号(以下「戸籍識別符号」という。)を提出することが可能となった。戸籍識別符号の取得の手数料は、マイナポータルから請求した場合には無料、市区町村の窓口で取得する場合には有料であるが、対象となる戸籍証明書と同時に取得する場合には無料となる。また、戸籍識別符号の有効期限は発行から3か月間となっているが、期間内であれば同一の戸籍識別符号を複数かつ同時に各種行政手続で利用することができる。

 このように、国籍を証する情報として戸籍識別符号を利用できるようにすることは、申出人の手続的、経済的な負担の軽減に資することが期待できる。

 また、法定相続情報一覧図には日本国籍を有する者しか記載されないことから、法定相続情報一覧図を提供した際には、改正案第158条の39第2項ただし書の「申出に係る国籍が当該所有権の登記名義人となる国籍であることを登記官が確認することができる事項を申請情報の内容としたとき」に該当するものと解することができる。

(2)旅券等の写し

 所有権移転等の登記申請において、日本の国籍を有しない者が登記名義人となる場合、ローマ字氏名併記の申出を行うこととなる。この場合、当該ローマ字氏名を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)を提供しなければならないとされている(不動産登記規則第158条の31第2項)。

 そして、ローマ字氏名を証する情報は、住民基本台帳に記録されている外国人の場合は、住民票の写しの提供を要するとされ、住民基本台帳に記録されていない外国人が旅券を所持しているときは、ローマ字氏名が表記されたページが含まれている旅券の写しであって、「原本と相違ない」旨の記載及び署名又は記名押印があるものの提供で足りるとされている(令和6年3月22日付け法務省民二第552号通達)。

 この点、国籍を証する情報においては、国籍はローマ字氏名と異なり公示されない情報であること、また、前述のとおり個人番号カード用署名用電子証明書の提供等により住所証明情報の提供を省略する場合もあることから、住民基本台帳に記録されている者か否かにかかわらず、公示を前提とするローマ字氏名の場合でも許容されている、旅券等の写しに「原本と相違ない」旨の記載及び署名又は記名押印があるものの提供で足りるものとすべきである。

 なお、旅券のほか、在留カード及び特別永住者証明書にも国籍の記載があることから、これらの写しの提供も許容すべきである。

(3)戸籍の証明書の写し

 日本の国籍を有する者については、国籍を証する情報として「本籍の記載のある住民票」の写し、「本籍の記載のある戸籍の附票の写し」又は「戸籍の証明書」(以下「戸籍等」という。)を提供することが考えられるが、国籍は公示されない情報であるから、登記申請の添付情報と同等の厳格さを求める必要はなく、戸籍等の写しでも足りるものとすべきである。

 また、本改正案の目的は、「所有権の登記名義人の国籍を登記所において把握すること」であるから、日本国籍であることを確認できれば足り、日本国籍であることの確認は、本籍地の都道府県までを確認できれば可能であることから、本籍の記載全ての提供は要しないと考えられる(旅券に記載される本籍の記載も都道府県のみである。)。また、本籍は機微情報であり、本籍の記載全てを提供することに躊躇する者の存在も考えられる。

 そこで、本籍の表示のうち、都道府県以外の部分について塗抹等マスキングによって一部が表示されていない戸籍等の写しに「原本と相違ない」旨の記載及び署名又は記名押印があるものの提供でも足りるものとすべきである。

 

3.登記簿の附属書類の閲覧請求について

【意見の趣旨】

 登記を申請した者以外の者が登記簿の附属書類の閲覧をする際、申請情報に記載された国籍について、閲覧できないようにする措置を講ずることを求める。

 

【意見の理由】

 登記申請と同時にする検索用情報の申出は、検索用情報を申請情報の内容として申し出る必要があるため、当該登記の申請情報の閲覧請求に影響が生ずることになる。登記を申請した者以外の者が登記簿の附属書類の閲覧をする際には、検索用情報のうち、出生の年月日及び電子メールのアドレスについては「一般に正当な理由があるとは認められない」として、実務上、既に閲覧できないようにする措置を講じることが相当とする運用がされているが、このことは、国籍についても当てはまる。

 そこで、登記を申請した者以外の者が登記簿の附属書類の閲覧をする際には、国籍についても閲覧することができないようにする措置を講ずるべきである。

 

4.その他(適正かつ迅速な登記事務処理がされるよう全国の法務局に対する予算及び人員の増加措置の要望)

【意見の趣旨】

 本改正により、登記事務処理日数がさらに増加することとなることが強く懸念されることから、適正かつ迅速な登記事務処理がされるよう法務局に対する予算及び人員を増加する措置を講ずることを求める

 

【意見の理由】

 本意見を提出する令和8年2月段階においても、不動産登記手続の申請から完了までの登記事務処理日数が、従前と比して増加しており、特に、東京や大阪などの大都市圏においては、1か月間以上を要している登記所も多数に及び、企業活動、不動産取引、金融取引その他の経済活動に多大な影響を及ぼしているところである。この登記事務処理日数増加の要因の一端は、検索用情報の申出の制度の開始であるところ、本改正により、登記事務処理日数がさらに増加することとなることは明らかであり、法務局職員への負担増が強く懸念される。

 言うまでもなく、適正かつ迅速な登記事務処理は、円滑な社会的、経済的活動を支えるための基盤となるものであるから、本改正の施行によって、登記事務処理日数がさらに増加し、経済活動が停滞することを強く懸念する。よって、本改正施行後に適正かつ迅速な登記事務処理がなされるよう、本改正施行前に、全国の法務局に対する予算及び人員を増加する措置を確実に講ずることを求める。


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